タイバニ関連を主にうp。
たまに兎虎や海老虎のSSうpしたり。
基本は写メで。
話には聞いていた。
表向きは正義感が強く、誰にでも優しく手を差し伸べるヒーロー達。
ポイントの為に、実際は誰もがライバルであり、協力という言葉など存在しないと。
何人居ても考え方も、行動パターンも別々。
分かり合う事は出来ないのだ、と。
「今期から新しく加入する事になった、スカイハイだ!よろしく、そしてよろしくっ!」
話には聞いていた。
けれど、実際自分の身を持って経験するとそれは堪えるというよりも異常にすら思えた。
ちらりと向けられた冷めた複数の視線。
会釈もなければ挨拶もない。
まるで、わたしの存在を落ちていたゴミをみつけた時の様に。
一瞥して、そのままそれぞれのトレーニングに向かってしまう。
本当に、こんなに冷たい人間関係だとは・・・。
緊張も期待も、小さな溜息に込めて吐き出す。
誰も使っていないバタフライに腰をかけ、腕を機械に押し当てた。
ドアが開き、肩まである黒髪を揺らして、褐色の肌の男性が入って来た。
彼もヒーローなのだろう、挨拶をして置こうか。
「あ・・・」
「おーっす!お疲れ!!相変わらずみんな早ぇのな」
弾むような、声。明るいその声は、この重々しい空気を貫いていく光のようだった。
ちらり、とわたしに向けた物と同じ視線が彼に向けられる。
「だっ!おっまえらなー、挨拶ぐらいしろよ、挨拶ぐらい!いーだろ、ポイントが減る訳でもねぇしっ」
ずかずかと端からヒーロー達に近付き、ばしっと肩を叩いたり背中を叩いて、無理矢理会話を交わしていく。
誰もが溜息を吐きつつも、仕方なしに彼と2・3会話を交わした。
苦笑を浮かべたり、明らかに迷惑そうに眉を潜めたり。
彼に向けられる態度は、どれも好意的ではない。
それでも、彼は人懐っこそうな笑みを浮かべて、楽しそうに会話を交わして行った。
彼が動く度に、重たい空気が少しずつ軽くなって行く。
まるで、曇天を裂いて行く天使のようだ。
ふと、彼と視線がぶつかる。
瞬きを数回して、子供のように首を傾げられた。
「えーっと・・・どちらさん?」
「あ・・・挨拶が遅れてすまない、今日から加入する事になったスカイハイだ、よろしく、そしてよろしく」
「お、新人か!オレはワイルドタイガーだ、よろしくなっ」
躊躇いもなく差し出された手。
他のヒーローとは違う、歓迎的な態度に思わず固まってしまう。
ん?と不思議そうに首を傾げられ、更に手を差し出された。
「ほら、握手」
「え?あ、あぁ・・・」
「これから一緒にこの街を守ってくんだろ?よろしくなっ」
にかっ、と笑った彼の笑顔は、とても眩しかった。
翌日も敵意というか明らかなライバル心をむき出して接してくるヒーロー達。
上に聞かされていた話だし、正直もう驚く事もなかった。
ただ1つ驚くのは、ワイルドタイガーくんの態度で。
自分のついでだったから、とコーヒーを取って来てくれたり、ストレッチを一緒にしようと声を掛けてくれたり。
出動しても、1人では動かせないような物があると、他のみんなにも声をかけて協力を得ていた。
理解が、出来ない。
ここはポイントを争い、上位を目指す競争社会ではなかったのか?
なのに、どうして彼は・・・わたしを含め、他のヒーローと積極的にコミュニケーションを取るのだろう。
「・・・ワイルドタイガーくん」
「ん?つか長ぇよ。タイガーとかでイイって」
「では、ワイルドくん」
省略するのそこかよ、と彼が笑う。
不思議に思っていた事を、思い切ってぶつけてみた。
一切表情を変えないまま、彼がコーヒーに口をつける。
「ポイントなんて、どーでもイイんだよ。オレはな、この街の平和を守れりゃそれでイイんだ」
「・・・」
「ヒーローっつーのは、そもそもそういうもんだと思ってる」
「・・・」
「ポイント取ってキングオブヒーロー狙う前に、一番大切な事があんだろ?」
ヒーローの目的は、市民を守る事・・・。
「でっかい事件が起きたらみんなで協力しねぇと、一番大切な物を守れねぇからな」
強い信念と、慈しむ心、本当の強さ。
何もかもを持ち合わせ、けれど決してそれで自分を飾らない彼の姿に。
わたしは、いつしか心を奪われていた―
あれから数年。
彼の心に感化され、気付けばわたしはキングオブヒーローの称号を得ていた。
一応は彼も憧れているキングオブヒーローの称号。
同じ信念を抱きながら、この栄光を勝ち取れば。
もしかしたら、彼もわたしの事を・・・そう、期待を持っていた。
いつの間にかわたしの中には、笑顔の彼でいっぱいになっていた。
「やぁ、ワイルドくん」
「よぉスカイハイ。相変わらず真面目にトレーニングしてるな」
通りかかった彼に、声をかける。
・・・今なら、誘えるかも知れない。
彼が好きそうな映画のチケットを、ポケットの中で握り締める。
「ワイルドくん、その・・・今晩、もし―」
「おじさん、何サボッてるんですか?」
「あ、バニーちゃん。別にサボッてなんかねぇよ、ちょっと話してただけ―」
「キングオブヒーローのスカイハイさんと違って、貴方は休んでる暇なんてないんですよ?」
ぐい、と彼の腕を引くのは今期から彼のパートナーになったバーナビーくんだ。
不満そうに唇を尖らせながら、またな、と彼が手を振って去って行く。
嫌な予感に、わたしはポケットのチケットを握り締めた。
バーナビーくんは、自分では気付いていないだろうけれど、きっと・・・。
わたしは必死になった。
もっと、もっと高く。もっと、もっと更なる頂点へ。
追い上げてくるルーキーのバーナビーくんが、手が届かないぐらいの領域へ。
市民をこれまで以上に慈しみ、愛し、守り、誰からも愛されるヒーローに・・・!
初めての敗北を味わって、暫らく立った頃。
今度は、映画ではなくて新しくオープンしたレストランの食事に誘おうとした時に。
「虎徹さん、今日は早く終わりそうですね。どうしましょうか?」
「んー、たまにはゆっくりと家飲みがイイな。美味い酒あるから、またバニーちゃん家でっ」
わたしの初恋は、幕を閉じた―
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