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タイバニ関連を主にうp。 たまに兎虎や海老虎のSSうpしたり。 基本は写メで。
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「大丈夫ですか?」


冷たく冷やしたペリエを差し出す。
ソファーに横たわったまま、頼りなく腕だけが動いた。


「・・・あー・・・」


目元から額にかけて乗せた、冷たく冷やしたタオルのせいで。
僕の大好きな宝石は、見えない。
うろうろと彷徨う手に、そっと瓶を押し付ける。
頼りない指先が絡み付き、ゆっくりと上半身を起こした。
重力に逆らえず、黒いパンツの上に白いタオルが落ちる。
琥珀色の宝石は、どんよりとしてなんだか濁っていた。


「虎徹さん、大丈夫ですか?」
「・・・んー・・・大丈夫だって、心配すんな」


へらっと笑って見せる顔は言葉とは対照的で。
思わずその手からペリエを奪い、キャップを捻って差し出す。
ありがと、と言う言葉がなんだかくすぐったい。
冷たい炭酸水を嚥下し、ふぅ、と短く息を吐き出された。
そっと額に触れる。なんだか熱っぽい。


「バニーの手ぇ、冷たくて気持ちイイ・・・」
「っ・・・ちょっと、猫じゃないんですからやめてください」


甘えるように擦り寄られて、僕の方が体温が上がってしまう。
慌てて手を離し、代わりに冷やしたタオルを押し付けた。


「毎年こうだからさ、気にすんなよ」
「意外でした。虎徹さんが、夏が苦手だなんて」


太陽が天高くから痛い位に光と熱を届ける、夏。
確かに今年は暑い方だけれども、虎徹さんが体調を崩したのには驚いた。
年中無休で元気を絵に描いた様な人なのに。
今日も夕方にはオフィスでふらふらし始め、車で送る頃にはこうなっていた。
熱中症の症状、頭痛、吐き気、体温の上昇、眩暈。
全て引き起こしている状態で、1人になんか出来る訳がなかった。


「あー・・・夏っていうかさ、こっちの夏が無理なのよ」
「こっち?シュテルンビルトの、って事ですか?」


褐色の腕を持ち上げ、そのまま目元を覆ってまたソファーに倒れてしまう。
隣に座りながら、僕はそっと黒くしなやかな前髪を横に流してあげた。


「ビル熱っていうの?アスファルトの熱とかすげぇじゃん」
「そうですか?僕は生まれた時からこの環境なので、なんとも思わないのですが」
「オリエンタルタウンはな、山あって川流れててさ。暑いけど、涼しいんだよ」


ふわっと目元が緩められ、虎徹さんが笑みを浮かべる。
故郷を思い出して、懐かしそうな顔を見ていると、なんだか僕まで胸の奥が温かくなった。


「そうなんですか」
「だからさ、この辺そういう自然ってねぇじゃん?そりゃ街路樹とかはあるけど、そういうんじゃなくてさ」
「えぇ、解ります。ちゃんとした山や木々がない、という事ですよね?」


そっと頬を撫でる。
気持ち良さそうに目を閉じながら、虎徹さんがぽそりと呟いた。


「なぁバニー。今度有給取って行こうぜ?」
「え、どこにですか?」
「…オレの故郷。母ちゃんと兄貴に・・・その・・・なんだ・・・」


手の中で、段々と顔が赤くなって行く。
じりじりと燃える様な熱さが手の平に伝わって来て。
・・・あぁ、酷い人ですね。
なんだか僕まで、熱さのせいで眩暈がして来ましたよ・・・虎徹さん―





時々。虎徹のコトが理解出来なくなる。


「だっ、おい海老!!」


いきなり手首を掴まれて、水をかけられた。
水道の蛇口から溢れる水が、滝の様にごぉぉ、と音を立てる。
段々とその水が冷たくなって行くのを、皮膚センサーが感知した。
この前、もっと人間に近くなるように、とミスター斉藤が追加してくれた機能は、正常に動いているようだ。
また明日充電に行った時に、ちゃんと報告しないと。内部メモに書き加える。


「・・・虎徹、これには何の意味がある?」
「意味って、お前今フライパン触っただろ!」


ここ!と指先を撫でられる。
どうやら取っ手を持った時に、誤って縁に触れてしまったらしい。
メモリーを巻き戻すと、確かに自分が触れている映像が残っていた。
熱いという感覚はあったけれど、こんな程度では融解しない。


「大丈夫だ、虎徹」
「何が大丈夫なんだよ!あーっ、もう赤くなってんじゃねぇか!」
「これはセンサーが・・・」
「センサーとか言うな!薬塗ってやるから、こっち来い」


あぁ、ほらまただ。
不機嫌になってる。怒ってる。苛々してる。
虎徹の心拍数や脈拍、色々な指数を計算して見るが、明らかに荒れている。
何がいけなかったのだろう。
怒らせたい訳じゃない。こんな風に苛々させたい訳じゃない。
だけど、何がこんな風に虎徹を怒らせるのかが解らない。
・・・インターネット接続起動、検索、検索結果照合。
理解不能、認識不可。
・・・再接続、再検索、検索結果照合。
理解不能、認識不可。


「・・・解らない」
「あ?何がだよ」


ソファーに無理矢理座らされ、向かい合った虎徹が救急箱を開ける。
中から取り出した傷薬を、そっと俺の指先に乗せた。
常温のクリームが触れる。


「痛いか?」
「痛覚センサーが反応しない。問題ない」
「・・・あそ」


不機嫌指数、上昇。
言葉が、見つからない。解らない。
知りたい。
何を今述べたら、虎徹がいつものように笑ってくれる?
俺は家庭用アンドロイド。人の為にならなければならない。
だから、虎徹の為にならなければならない。
持ち主を苛立たせたり、怒らせたりするコトは許されない。
・・・引っ掛かる。何かが、引っ掛かる。
怒らせたくない、笑って欲しい。
だけど、それはプログラムではなくて、いや、きっとこれはプログラムだ・・・。
エラー。


「おい海老、どうした?」
「・・・問題ない。エラーが起きているが起動に問題はない範囲だ」
「火傷と関係してんのか?」


まるで自分が怪我をしたかの様に。
悲痛に顔を歪めて、虎徹が指先を撫でる。


「関連性はない」
「・・・そか。後は俺やるから、お前は少し休んでろ」


ぽん、と肩を軽く叩かれる。
虎徹が立ち上がり、そのままキッチンへ向かった。
やる。
そう答えたいけれど、少し休めと命令された。
やりたい。虎徹の好きなチャーハンは、後は皿に盛るだけだ。
だけど、命令は少し休めだから、動けない。
エラー。
・・・またエラーが発生している。
明日のメンテナンスで、ミスター斉藤によく見て貰わなければならない。


ゆっくりと目を閉じて、深く息を吐き出した―



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